宇賀田直人 デザイン

良かった本や音楽 2009年・春

zakki
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人民は弱し 官吏は強し/星新一
 製薬会社を設立した父親である星一さんの、明治/大正期の伝記。描かれる国家官憲による理不尽な事業妨害と、それと闘う民間起業家の対立構図は、現代の日本社会のあんな事やこんな事と同じように映り、この国は戦前も戦後も全く変わってないなあ…いや、世界中のあらゆる支配する側と支配される側の構図もか…もやもや。島国ゆえんか、長い歴史で築かれた“御上に平伏す”集団性か、近年しばしば考えていることにズドンと響いた内容だった。

対岸の彼女/角田光代
 なんだか好きな角田さん。設定に少し強引さを感じたが一気に読めた。主人公の一人が最後に見つけた××に10代の頃の、良くも悪くもな純粋さを思い出したりして最もジーンとくる。前向きなな印象の結末だったのが少し意外。これもドラマ化されているのか…。

電子音楽インジャパン/田中雄二
 刊行時以来の再読。YMOでの教授・坂本龍一さんにしばらくハマりかけていたので久々に分厚い本書を開くが、アナログシンセなど当時の楽器の話は何度読んでも面白い。

思い出トランプ/向田邦子
 おそらく15年以上振りの再読。当時お正月とお盆だったかな?に放送されていた向田ドラマが何故だかとてもとても好きで、よく観ていた。初期の小林亜星さんよりも特に小林薫さん/田中裕子さんの印象が今でも強く残っている。それがきっかけで小説や短編集を読んではみたが、子どもだったせいか向田文学の空気感やテーマを読み取る力は当時の自分には無かった…。20代前半に妹の和子さん著の本がいくつか出たこともあってその人物像に迫ってはいたが、30歳を過ぎて読み直してみたら猛烈な生々しさと湿度を感じてしまった。なんだか判った気になっているのかもしれないが、これが大人(=おっさん)になったということか? 他にも読み直してみよう。

丘の上のパンク/川勝正幸・編著
 口述伝記という形や、主な時代設定は先に出た「ライフ・アット・スリッツ/浜田淳・著」と若干並走する感じだろうか。歴史情報としての新鮮さは正直あまり無かったのは、個人的にファンという訳ではない藤原ヒロシ氏の影響や情報が若い時から知らずのうちに刷り込まれていたからか? そういえば音楽は結構好きか…初めて見たのは16歳の時だった。子どものような素直さと好奇心で、他者との広い交流を持ちながら現在に至る点は単純に尊敬。膨大な作業が透けて見えてしまう川勝氏流石の編集力にも感動。藤原ヒロシさんという人物にフォーカスしてもピントがいまひとつ合わない、というか霧に包まれているような、そうでもないような…な雰囲気がなんとも。それにしても40代元気いっぱいで伝記が作られる、というのはどういう気持ちになるんだろう?

デザインするな ドラフト代表宮田識/藤崎圭一郎
 近年の所属されている若手の方たちしか知らなかったけれど広告屋さんのお話の中では珍しくフムフム、と思えたり共感を得られる箇所が多かった本文部分。豪快だけど根底には思慮深く哲学を持ち魅力的な方なのかな? 語られていることやタイトルとは裏腹に、とってもデザインされているとしか思えない造本のおかげで字数が少なく、ハンドリングは悪いけどさらっと読める、不思議な一冊。春先にあった展覧会図録なのだろうか?

今日のおかず/高山なおみ
 これは実用書だけど…良い本。「野菜だより」からはじまったビニールカバーのシリーズ最新作。序文が良いのは当然として、どっしりめ(に思える・笑)のレシピに対してアンダー気味の光量で濃厚に分解された日置武晴さんの写真のバランスは、相変わらず高山さんご本人を表すような空気がつくられている、かな? 前作はぶっかぶかであれ?と思ったビニールカバーのフィット具合が今作は○。仕方がないかもしれないが、色々と見ているので若干レシピの既視感が気になってきた…。「野菜だより」の続編的なものも見てみたい。

Rules / The Whitest Boy Alive
 ”Harder, Better, Faster, Stronger / Daft Punk”のカヴァーとしか聴こえない”1517″は、間奏でちゃんとカウベルのような鳴り物を鳴らしているところにグッとくる。ライブでは”Music Sounds Better With You / Stardust”も演奏しているようだし…本当に好きなんだろうなあ。

playing the piano 2009 / 坂本龍一
今年のピアノ・コンサートツアーを、各公演毎にiTunes Music Storeにて即販売していたライブアルバム。そのコンセプトだけでも最高だが、この歳にしてようやく教授の音楽をじっくり聴けるようになったのが嬉しい。なんとなくだけど4月28日の東京公演分を選んで購入。

Kitsuné Tabloid by Phoenix / V.A.
「Dirty Diamond」とか「Bugged Out Mix Erol Alkan」のDisc2とか、古く辿ると「From Brussel with love」とか? とにかくこの質感のコンピレーションはなかなか少ないので、大傑作。Phoenixはやっぱり凄いセンスだなあ…。ブックレットのThomas / Brancoによるコメントもまた最高。古い音源はさておき、Rise Above / Dirty Projectorsが白眉で嬉しい発見。

Saskamodie / Mocky
昨年のJamie LidellやGonzalesに続くルーツを志向した音像と、歌詞の無い(ハミングやスキャットはある)楽曲が大半を占め、想像と妄想をかきむしられる豊潤な楽器構成と室内楽的なアレンジメントが本当に素敵! これぞザ・音楽。ジャズの文脈に乗っかりながらも、Pascal ComeladeやRobert Wyattの近作にも近い雰囲気を感じた。前にも書いた気がするがGonzales / Le Together Ensemble / White Gloves etc. etc.もあわせた来日公演をどなたかぜひともに…。

Sensuous Synchronized Show / Cornelius (DVD)
昨年の3月に東京国際フォーラムで行われたライブを収録したDVD。なかなか音が良くて好きな国際フォーラムで、と聞きすぐにチケットをとって、演奏/演出はもちろん、“座って”鑑賞出来たとても良いライブだった思い出があるので、早くも発売が嬉しい限り。近年のお決まりで、絵が無いのが好きなので早速音データだけリップして映像無しで聴きまくる。

Something Good Can Work / Two Door Cinema Club
ちょっといなたいけど、トロピカ〜ルでいいメロディ。これもKitsunéだ。

Penelope Pitstop / Breakbot (via YouTube)
BreakbotもEd Rec.入りだそうで…。未リリースだと思うけどこの曲のこの映像つきが絶妙で楽しい。