宇賀田直人 デザイン

『映像の世紀』と『MOMAT コレクション』展の偶然

zakki
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少し以前にTwitterでやりとりがあって調べてみたら自治体の図書館に所蔵されていることがわかり、1ヵ月くらいかけてコツコツ借りていた『NHKスペシャル 映像の世紀』をようやく全て観終える。1895年ルイ・リュミエールによる「工場の出口」から始まる世界を記録する映像の歴史。NHKと米ABCの共同制作による全11巻14時間弱、20世紀の戦争と戦争に至るまでの経緯、およそ80年程が全て記録映像で振り返られる大作ドキュメンタリー。よく観られているのであろう4巻「ヒトラーの野望」と5巻「世界は地獄を見た」はDVD盤自体がボロボロになっていました。

今まで不勉強だった部分があらためて勉強になった第一次大戦から第二次大戦への経緯、第二次大戦後から冷戦時代の経緯。また、古くチリチリとした映像でこれでもかと写し出される戦争が始まる前熱狂し傍観していた/そうさせたのは誰なのか、そして民族や国に絡めとられた悲劇の繰り返しからは、今の時代と重なる部分も数えきれないくらい連想させられる。これら史実映像は視聴者へ「考えなければならない」のは当たり前の上で「どう行動すべき」かを猛烈に突きつけ、また史実そのものが未来へ向けた回答として映像を描いているのでは、というパラドックスのような考えすら浮かびます。

画面比がまだ4:3だったり、正直笑ってしまうくらい壮大なテーマ音楽やサントラからは制作された90年代の空気も感じられます。収録構成されているのはフォークランド紛争、湾岸戦争、311、東日本大震災以前でこのアーカイブ以降、変化している戦争や事件の「絵」は将来どのように振り返られるのでしょうか。

また11巻「JAPAN」を中心に市井の人たちの服装や不思議そうにカメラを見つめる表情など、当時の暮しの一端が垣間見えて面白い箇所も沢山。中学の社会の時間で見れたりしたら良かったな、残酷な映像も少し出てくるけど。学びのたいへん多い現代史教材でもあると思います。

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そんなこともあまり頭に無く、あくせくと動いていた日曜日、別の展示を楽しみに足を運んだ国立近代美術館が運良く無料鑑賞日で『所蔵作品展 MOMATコレクション』が開催中。「それじゃついでに…」と特に期待もなく覗いてみるとこれが偶然『映像の世紀』とシンクロするかのような展示構成と認識し、強烈な鑑賞体験となりました。

膨大な展示数の中2から8室では、関東大震災から戦争に突入していき、終戦を迎え「もはや戦後ではない」高度成長期を経て、Chim↑Pomの福島第一原発事故を題材にした作品「REAL TIMES」までの、20世紀日本美術をテーマ分けして時代を辿る構成。画家や美術家たちが時々の状況に対しどういう作品を作り何を投げかけていたのか、を丁寧に解説されたキャプションとあわせ時間軸の流れに沿う形で鑑賞できます。キャプションは作品背景を理解するための手助けになり、じっくりと読みながら観ていきました。

デザインや写真、映像作品も少し。亀倉雄策による有名な東京オリンピックや札幌オリンピックのポスターも、これと並べて展示されています。

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「原子エネルギーを平和産業に!」1956年、シルクスクリーンで作者寄贈。額装され映り込んでいるのはちょうど対面に展示されていた岡本太郎による原爆にさらされる人をテーマにした作品「燃える人」1955年。(展示作品は一部を除き撮影可、ネット上に大っぴらに公開するのは躊躇しますがこれだけは)

美術館所蔵作品展ですが、この構成は8月24日までの開催です。観覧料もお手頃、次の無料観覧日は8月3日で、同時に開催されている『美術と印刷物 1960-70年代を中心に』展(こちらが当初の目的)も小規模ながら「流石美術館のアーカイブはすごい…」と思わせる内容、3回展示替えがあるとのことでおすすめです。また企画展『現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展』も良い評判を耳にしているので近日中に再訪しようと予定しています。

現在の政治状況とどうしても連想せざるを得ない『映像の世紀』と『MOMAT コレクション』の偶然が重なった二つの体験でした。